住宅ローン控除の延長と省エネ基準適合住宅の取扱い — 令和10年以降の建築確認に向けて
令和8年度税制改正により、住宅ローン控除の適用期限が令和12年(2030年)12月31日入居分まで5年延長されました。延長そのものは歓迎すべき内容ですが、住宅を手がける工務店にとって本題は別にあります。令和10年(2028年)以降に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅が、原則として適用対象外となる点です。
延長の内容
適用期限は令和8年1月1日から令和12年12月31日までに入居した場合へと5年延長され、控除率は一律0.7%とされています。
あわせて、床面積要件が新築・既存ともに40㎡以上に緩和されました。ただし合計所得金額が1,000万円を超える方、および子育て世帯等への上乗せ措置を利用する場合は、引き続き50㎡以上が要件となります。
既存住宅についても拡充が行われています。省エネ性能の高い中古住宅について借入限度額が引き上げられ、控除期間が10年から13年に延長されました。既存住宅にも子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置が新設されています。買取再販やリノベーションを手がける事業者にとっては、提案の幅が広がる改正です。
本題は令和10年以降の建築確認
改正のうち、商品企画に直結するのは次の点です。
令和10年以降に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅は、原則として住宅ローン控除の対象外となります。背景には、令和12年以降は省エネ基準適合住宅の新築等が認められなくなる見込みであることがあります。
経過措置は設けられています。令和9年末までに建築確認を受けた省エネ基準適合住宅、または登記簿上の建築日付が令和10年6月30日以前である省エネ基準適合住宅の新築等であって、令和10年から令和12年までの間に居住の用に供したものは対象となります。ただしこの場合の借入限度額は2,000万円、控除期間は10年とされています。
つまり、令和10年以降に建築確認を受ける新築住宅で施主が住宅ローン控除を受けるには、ZEH水準以上の性能が必要になります。省エネ基準適合にとどまる仕様では、控除額がゼロになります。
工務店にとっての意味
これは税務の問題というより、商品企画と営業の問題です。
標準仕様が省エネ基準適合にとどまっている場合、令和10年の建築確認分から、住宅ローン控除を提案材料として使えなくなります。ZEH水準への引き上げには、断熱仕様の見直し、設備構成の変更、標準単価の再設定、協力業者との単価交渉、営業資料の作り直しといった一連の作業が伴います。着手から標準化の完了までには相応の期間を要します。
建築確認の時期が基準となる点にも注意が必要です。契約や入居ではなく建築確認であるため、実務上のタイムラインは前倒しになります。令和10年に建築確認を予定している案件は、令和9年中には仕様が固まっている必要があります。準備期間として使えるのは実質的に今年度から来年度にかけての期間です。
また、令和10年以降に入居する場合、土砂災害特別警戒区域等のいわゆる災害レッドゾーン内における新築住宅も原則として適用対象外となります。建替え、既存住宅の取得、リフォームは対象に含まれます。取得を検討されている土地の区域指定については、計画の初期段階で確認しておくことが望まれます。
借入限度額について
借入限度額は、住宅の種類(認定長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、その他の住宅)と世帯区分(子育て世帯・若者夫婦世帯か、一般世帯か)の組み合わせで細かく分かれます。新築・買取再販と既存住宅でも異なります。
具体的な金額については、公表されている資料の間で記載に食い違いが見られる箇所があるため、本記事では一覧を掲載いたしません。国土交通省が公表している住宅ローン減税に関する資料をご確認ください。子育て世帯等に該当するかどうかの判定は入居年の12月31日時点で行われる点についても、あわせてご確認いただく必要があります。
まとめ
住宅ローン控除の5年延長は、住宅需要にとって前向きな材料です。一方で、令和10年以降の建築確認から省エネ基準適合住宅が原則対象外となる点は、標準仕様の見直しを迫る内容です。
基準となるのが建築確認の時期であることから、対応に使える時間は見た目より短くなります。標準仕様がZEH水準に達していない場合は、早い段階で引き上げの検討に着手することをお勧めいたします。個別の適用可否については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。